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住宅金融公庫は詐欺師集団か 増田

ゆとりローンが機能するためには、三つの条件が必要であった。
 第一に、大卒総合職男子社員であれば、生涯を通じて名目所得が伸びつづける。
 第二に、これらの社員の雇用は生涯にわたって保障される。
 第三に、地価は必ず上昇をつづける。


 この三つがすべて揃ったときに、当初軽い負担がだんだん重くなるという変則的なローン制度を、借り手が受け入れることができるのだ。このゆとり口−ンの話を海外の機関投資家にすると、彼らはまず「住宅金融公庫は詐欺師の集団ではないか」という反応を示す。勤労者の居住資産を抵当権を行使して巻き上げるために、この制度を導入したのではないかと彼らは疑うのだ。そして、住宅金融公庫が政府機関であることを知ると、彼らは腰を抜かすほど驚く。p227
 もし、民間企業がこういうローンを設定すれば、間違いなく詐欺や公正取引法違反に問われるような仕組みではないかと彼らはいう。あてにならない経済成長やインフレの進行を前提にして、破滅的な被害を住宅購入者におよぼすことになるからだ。経済成長も所得も地価も上がったり下がったりするものなのに、それを一方的に上がりつづけると仮定するのは借り手を願しているのではないかと疑われてもしかたがない。さらに根本的な問題は、住宅金融公庫の設定する基準金利だ。住宅購入者が支払う基準金利は、公庫の調達金利以下に設定されており、しかもそれを長期固定で貸し出している。つまり、金融業者である住宅金融公庫は、大赤字経営を積極的にやっているのだ。

インフレを前提にしたゆとりローン制度 大竹
 住宅金融公庫の「ゆとりローン」については、増田さんとわたしが早い時期からその問題点を指摘してきた。この問題は現在の日本経済を象徴しているとわたしは思っている。ことの本質は、ゆとりローンという制度が、いまやゆとりではなく首吊りをよびかねないことにある。
 住宅の購入者に対して最初の五年問は元利支払金額を低く設定し、六年目から元利払金額が飛躍的に上がるというのが、ゆとりローンである。ローン返済初期の支払いが楽だからというわけで、ゆとりローンと名付けられた。この制度を「ゆとり」として成立させた前提は、住宅購入者の所得が将来にわたって上がるということである。したがって、住宅購入後五年もたてば、所得の上昇によって多くなった元利払いも余裕をもって行なえるに違いないということである。

 さらに一戦後50年間上昇をつづけた地価は、今後も上昇をつづける。したがって、もし万一事故や病気で稼ぎ手が死んだり、くびきりや転職などで収入がなくなったり大幅に減ったりしても、そのときは不動産を売却すればローンの残債が支払えることも、ゆとり口ーンを成立させた前提であった。すなわち・住宅金融公庫がこの制度を設定した背後には、所得と地価の上昇が今後とも永続的につづくということであった。つまり、ゆとりローンとはインフレ経済がいつまでもつづくという前提にたって初めて成立する制度であった。
 この制度が導入されたのは、1993年である。すでに不動産バブルの崩壊が進み、住宅地地価が下落している時期に、景気対策の名のもとにゆとりローンが創設されたのである。この種の先見性の不足は、官僚に特有のものである。

 いま現在・すでに制度の創設から五年以上がたっている。急上昇した元利支払いに、多くの人々が苦しみ始めている。これまでは月12万円だった支払いが、6年目からは18万円に上昇するのである。給与は上がっていないし、ボ−ナスは大幅に減っている。だから六万円の差額が支払えない。かといって、家を売って賃貸住宅に移ろうとしても地価は大幅に下がっている。売却価格とローンを比べるとローンのほうが多いから、家を売っても口ーンが全額返済できるわけではない。購入価格の8割程度をローンで調達して、五年間の返済で元金も少しは減っているのに、それ以上に資産価値が減っているのである。この状態を会計用語でいえば、明らかな債務超過である。企業を清算しても借金が返せない状態が債務超過とよばれるのだが、日本では多くの個人がいまや債務超過状態に陥っている。

「地下は下がる=日本は再生する」 増田悦佐 + 大竹愼一 フォレスト出版 ¥1700.−から転載

 

 

住宅ローンの清納者や破綻者が続出か
住宅金融公庫「ゆとり返済」制度が原因で
                    返済6年目から返済額が急増の制度欠陥

 住宅ローンの返済に苦しむ人が急増しています。当初5年間の返済額を抑える住宅金融公庫の「ゆとり返済」かその主因です。
 ゆとり返済の仕組みと、住宅ローン滞納者の続出ぶりを覗いてみました。
住宅金融公庫のゆとり返済制度は、景気回復を狙う政府の方針で93年に登場しました。当初5年間の返済負担を軽くなるようにして、若い世代や低所得者層が住宅融資を受けられるようにしたものです。
 
「頭金ゼロ、家賃並みの返済額で住宅が買える」という謳い文句に引き寄せられ、93、94年の2年間に住宅金融公庫から新規借り入れした約110万帯の中で、71万世帯がゆとり返済を利用したのです。「ゆとり返済期間が終了する5年後には景気も回復し、給料も地価も上がっている」と強調して公庫は利用者を募りました。その勧誘に乗って、本来なら家を保有するには早い若年世代や低所得者層までが住宅を購入したのです。それまで6兆円台で安定していた公庫の新規貸し出しが、94年に一気に17兆円余りにまで膨張しました。ゆとり返済はもともと、収入が増えることを前提にした制度です。ところが、景気は悪化する一方で、地価は下げ続け、賃金は横ばいか減少しています。しかもサラリーマンは企業のリストラにあって失業者は急増しているのです。この状況では、ゆとり返済期間が終了して、大幅に返済額が増えれば、滞納者やローン破綻者の続出が予想されます。
 では一体、5年のゆとり期問が終了して、返済額がどの位増えるのでしょうか。
公庫が示す標準例を見てみましよう。
 
融資額約2900万円、返済期間25年、金利年約4%の場合、当初5年間は月10万8000円で済んだ支払いが、6年目から17万6000円と気に1.62倍に増えます。月の返済限度額は月収の約2割とされています。毎月17万6000円返済するには月収80万円なければならない計算になります。5年前に「家賃並みで家が持てる」との言葉を信じて買った、若い世帯や低所得者は返済に行き詰ることになるのは目にみえています。
 要するに、ゆとり返済制度は家を持つための資格のない人に融資するようにした政府の欠陥政策なのです。同制度はわずか2年で見直しされ、95年以降は、元の返済条件に戻されていることが、それを裏付けています。

 そこで、公庫ではローン返済額が急に膨らみ、滞納者やローン破綻者を出さないように
「救済策」を打ち出しています。
 6年目以降の返済を減らす分、返済期問を10年以内で繰り延べするというものです。
 ただ、収入月収が、6年目以降の返済額の4倍以下の世帯に限られるなど、適用には一定の条件が設けられています、また、返済期間を延長すれば、返済総額は当然増えます。6年目から増える住宅ローンを、そのまま返すか、支払い期間を延長するか、どちらを選択してもゆとり返済を利用した人が返済に苦しむのに変わりはありません。この状況をみて、住宅購入計画を持つ中堅勤労者の中に、持ち家をあきらめ賃貸派に転向した人も多いようです。この影響もあって4月の住宅着工戸数は前年同月比16%も減っています。これも景気低迷の要因の一つです。

以上、
太地商事  発行 月刊PISC 1998年7月より 掲載
                   大阪支店 電話 06−251−7131

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