tomatoyoko.gif (61032 バイト)    阪神間(西宮市−甲子園界隈)の賃貸住宅 と分譲マンションのトラブル回避のヒント集、 マンスリー マンションを掲載. リンクフリー

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稲葉なおとの気になる業界話
 

 

 阪神間では、下記記事のような事は、実際無いですよ。この記事のような事が起きているのは、関東地区が主だと推測されます。阪神間では、慣習で通常損耗はすべて敷引に含まれるという判例もあるくらいですので、ほぼ敷金返金問題では、無風であります。 ただ、阪神間でも、借主の無知につけこんで、近年 敷引(解約引)を契約時に頂いて、さらに解約時に原状(現状)回復費用の請求をして、2重に請求する悪意の貸主がこの不況とあいまって増え始めている節が見られるのは、残念なことです。
 慣習は、その地域により、まったく違います。全国でどれくらい慣習の違いがあるのかわかりません
。そのために建設省(現国土交通省ガイドラインが作られた訳であり、、しかもその慣習が、すこしづつ変化を伴っている様です。その辺を知った上で、下記の記事を読んでください。 また、記事にありますように、本人訴訟は簡単です。気楽にしましょう。

           平成14年3月08日                  トマト店主 西岡

ちょっと古いですが、住宅新報の記事より掲載 2000年2月18日 +25日 +3月3日
敷金返金問題の実態
1 ふっかけ見積もりを作成
2 内容証明から少額訴訟へ 借主負担の条文も無効
3 カネも手間もかからぬ 少額訴訟で有利な判決

1 ふっかけ見積もりを作成

 いつものように処理しておけ、と課長に言われ、彼は多少の疑問を感じながら工務店に電話した。貸主として原状復帰費用の見積もりを作るためだ。工務店の担当者も心得ていて、すぐに現場を確認して見積りをファクスするという。彼の会社は賃貸マンションを数棟所有している。彼の部署はその管理を担当していた。「敷金は全額現状復帰工事代として差し引くのが原則。かといって敷金の類とぴったりの工事見積書ではいかにもわざとらしいから、二、三万円上乗せした見積書を作ってから、退出した元借り主に見せるように」

 課長からはいつもそう言われている。見積書の中身はというと、壁と天井は全部張り替え、汚れの具合によって全額元借り主に請求するか折半するか判断する。床と設備、サッシのクリーニング代は全額元借り主負担という方針だった。もちろん、原状復帰に関して、国土交通省からガイドラインが出されたことも、その中身についても彼は知っていた。自然損傷部分については貸主負担ということも一応理解しているつもりだった。家具を置いていた場所のカーペットのへこみやテレビや冷蔵庫の背中の部分にできる電気焼け、それにエアコン設置のために開けたビス穴や、カレンダーなどをつるすために開けた画びょうの穴や壁の変色、さらにクロスに付着した煙草のヤニのクリーニングまで、貸主の負担というガイドラインを読んだとき、自分たちのヤリ方がいかに法の指針に反しているかを再確認したようで恐ろしくなった。

 一度課長に尋ねてみたことがある。借りてた人が敷金返還に関して法的手段に訴えるようなことはないのですか、と。「それはまず考えられないね。理由は二つあるな。一つはウチの契約書にはちゃんと書いてあるだろ、原状復帰代は全額借り主負担だって。建設省が出したのはあくまで指針であって法律じゃないんだから、当然契約書の特約が優先するからな。もう一つはカネの問題だな。二十万円前後のカネくらいで弁護士に相談なんかしてたら、着手金で足が出ちゃうからな。そんな無駄金を使う人はまずいないよ」「でも、少額訴訟っていう手もありますよね」彼は以前に耳にしたことがある、新たな法的手段のことが気になっていた。「ああ、あれね。あれだって同じだよ。裁判所に自分で出頭して手続きを取れる人なんてまずいないから安心しろ」課長にそう言われると、たしかにそんな気がしてしまう。彼はいつものように、ふっかけた見積もりを作成し元借り主に提出しては、最終的に若干値引きして、ちょうど敷金の額にぴったり合わせて敷金返還金はセロというヤリ方を繰り返していた。

 そんなある日のことである。彼はいつもとは逆の立場で、敷金返還の実務に携わざるを得なくなった。子どもが生まれるのを機に、今まで借りていた賃貸マンションを出て、もう少し広い物件に引っ越すことにした。新居に落ち着きそろそろ敷金も返還されるだろうと思っていたのだが、大家の方からは何も言ってこない。しびれを切らして電話したら、原状復帰の見積もりに手間取ってるからもう少し待って欲しいという答えが返ってきた。嫌な予感がしつつ、それから一週間ほど待った後、いきなり見積書が郵送されてきた、中身を確認して驚いた。預けておいた敷金では足らず、あと二十万円ほど追加で払えというのだ。まさか彼自身が「ふっかけられる」立場になるとは思いもしなかった。

 

2 内容証明から少額訴訟へ 借主負担の条文も無効

彼はまず上司の課長に相談した。「そんなのほっとけよ、無視無視」。苦笑いしながら課長は簡単にそう言った。「でも、払わないままにしておいて大家が訴えでも起こしたら……」「逆の立場に立って考えてみたらわかるだろ。そんなハシタ金のために弁護士にカネ払って訴え起こす奴はいないよ」課長は無視することで敷金差し引きゼロで仕方ないだろうという。たしかに課長の助言はもっとものような気がした。けれども彼としては、そう簡単に無視と割り切れそうになかった。ふっかけた見積書を作成し敷金の倍近いカネを借り主から搾取しようとしている。

 見積書には床のカーペット、壁と天井のクロスはすべて張り替え、さらにクリーニング代に残材処分費、そして諸経費とずうずうしく記載されていた。敷金が二十四万円。原状復帰工事代金が合計四十四万円。差し引き二十万円を追加で払えと大家は主張しているのだ。彼の会社の敷金精算方法もやり過ぎではと思っていたが、

 彼が借りていたマンションの大家は更にその上手を行くえげつなさだ。請求すればおじけづいて払ってくるだろうと高をくくっている大家のことを思うと、どうにも腹の虫が納まらなかった。こうなったらこっちから仕掛けて敷金を取り戻してやる。それにはどうしたものかと彼は考えた。自分は賃貸業の実務のプロだと思っていたのに、情けないことに何から手を付けたらいいのか全くわからない。

 まずはだれかに相談に乗ってもらいたかった。弁護士にとも考えたが相談料を払うのはもったいない気がした。調べてみて驚いた。区役所、都庁には無料の相談窓口が用意されているだけでなく、生活センターや消費者センターという頼もしい相談相手が見つかった。弁護士事務所に駆け込まなくても生活者をバックアップする公共の機関がこんなにあるとは知らなかった。しかも彼のトラブルを聞いた相談員の指示は非常に具体的かつ明快だった。「それはかなり悪質な大家ですね」ずばりと切り捨てた後、まず内容証明郵便を出せというのだ。「あなたの説明内容が正しければ、すべて自然損耗の範囲と考えられますから原状復帰費用は大家負担です。敷金は全額返還してもらうよう大家に書面で主張すべきでしょう」「でも、内容証明は作成費用だけで何万円か取られるのでは……」「それは弁護士に依頼するからでしょ。内容証明なんてご自分で書きなさい。書き方でわからないことは教えてあげます」「でも、内容証明出したくらいで大家が敷金を返還するとは思えないのですが……」

彼は自分の会社のことを考えた。借り主から書面が届いたくらいで、わかりましたと手の平返したように敷金返還に応じる大家がいるとは思えなかった。「そうなったら少額訴訟しかないですね」「でもそうなるとそれこそ弁護士費用が……」「何を言ってるんですか。弁護士に頼らず少額で訴えを起こせるからこそ少額訴訟なわけです。わからないことがあれば、簡易裁判所の担当者が相談に乗ってくれるはずです」「でも、訴えて勝てるんでしょうか?」。実は彼が借り主として契約した契約書にも、彼の会社が普段使用している書式と同様に、「原状復帰費用は借り主負担」としっかり明記されていた。この条文がある限り、裁判では勝目がないという気がした。相談員は契約書に眼を通した後、さらりと言った。「この条文は効果ありませんね」

 

3 カネも手間もかからぬ 少額訴訟で有利な判決

借り主に原状復帰代を全額負担させるような特約は、借り主に対する法律上、社会通念上の義務とは別個の新たな義務を課す特約であることから、一定の要件をクリアしていないと効力がないという。国土交通省のガイドラインにはその一定の要件として次の三点が載っているらしい。

@特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的合理的理由が存在すること一家賃を安く設定する代わりに修繕を負担させるなど)、

A賃借人が特約によって通常の原状回復義務を越えた修繕等の義務を負うことについて認識していること、

B賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること。

つまり契約の時点で借り主に十分な説明がなされず納得を得られていなければ、特約の効力は否定されるというのだ。相談員は特約が否定された判例も教えてくれた。特約のある契約書に署名してしまったからといって諦めることはない。そう聞いて彼は果然とした。知らなかった。特約さえあれば絶対貸主有利だと思っていた。

 彼は内容証明の作成から取りかかった。本屋で買ったマニュアル本を元に作ってみると、これが実に簡単だった。書面を手に郵便局で手続きを終え数日後、大家からも内容証明が届いた。請求した金額を即刻払えというものだった。いよいよ少額訴訟しかなくなった。訴訟手続きも彼には初めての経験だった。面倒な作業に一日忙殺されるのではー不安な思いで彼は簡易裁判所に足を運んだ。

 受け付けで少領訴訟の提訴をしたいと言うと用紙のひな型を渡された。見ると中身はほとんど書き込まれている。敷金返還請求の趣旨・請求額・原因と経緯を書き込むだけだ。わずか一時間弱で手続きは終了してしまった。裁判の日は提訴してから約一カ月後だった。出頭し、受け付けで署名して待っていると法定に呼ばれた。裁判宮と民事調停委員と裁判所書記官の三人に、原告である彼と被告の大家という取り合わせだ。訴状を読み、事実関係についての認証が終わった後、話し合いが始まった。調停委員がいうには、大家はできれば和解したいらしい。もちろん彼としても異論はない。法廷から調停室に移ると、調停委員はまず大家に対して、敷金返還に関する最近の判例の説明を始めた。

 貸主不利な判決の数々に大家の顔色がみるみる沈んでいく。その後、大家が席を外し彼と調停委員が話し合い、今度は大家と調停委員、そして再び彼と調停委員が話し合った。結果、四十四万円の原状復帰代のうち、六万円を彼が払うことで和解が成立した。壁と床で特に汚れのひどかった部分のみ借り主負担というわけだ。わずか一時間の話し合いで敷金二十四万円のうち十八万円が返還されることになった。

 内容証明にしても提訴にしても、それがいかに簡単なことか、彼はつくづく思い知らされた。弁護士を雇う必要など全くない。恐ろしくなった。

 契約書に明記した貸主優位の特約の効力を誤信し、訴訟はカネと手間がかかるものと誤解していたからこそ、借り主に対しあこぎに原状復帰代を請求できたのだ。自分の業務のヤリ方がいかに危ういものか、初めて理解できたような気がした。今まで訴えられなかったのが不思議なくらいだ。

 敷金が彼の銀行口座に振り込まれてから数日後、課長が思いついたように訊ねてきた。「そういえばこの間の大家からの請求書どうした? 結局何も言ってこなかっただろ」課長は自分のアドバイスがいかに的を得たものであったか、確認するような口振りだ。「いや、それがですね」そう切り出したものの、彼は何から話そうか迷っていた。

 

 

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