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女子大生、不動産屋に殺される
 

 

女子大生、不動産屋に殺される

東京都板橋区の女子学生会館に住む女子短大生(一八)が、学校へ行くと言って学生会館を出たまま、行方不明になった事件があった。警視庁捜査一課と高島平署は短大生から転居先のマンションの相談を受けていた、不動産会社の店長を任意同行して調べたところ、首を絞め殺害したことを認めた。店長が供述した現場に同行したところ、短大生の遺体が発見されたため、この店長を殺人・死体遺棄の疑いで緊急逮捕した。

 以下「身近な危機から身を守る本」著者=柘植久慶 PHP文庫 より抜粋

どう対処すべきだったか

 逮捕されたのは不動産会社の店長(41歳)である。その店長という肩書で信用させ、マンションを見学させて歩き、大田区の知人のマンションで乱暴しようとし、抵抗されて殺害したものだ。犯人はヒモで被害者の首を絞めて殺害、遺体を合成樹脂製の袋と毛布に包み、自動車で埼玉県の荒川河川敷に隠し、六日後に茨城県の河川敷に埋めたのである。被害者は栃木県足利市から短大に通うために上京、女子学生会館に入っていた。一人でマンションを借りる計画で、不動産会社に依頼しており、その応対に出たのが犯人だった。

 毎日のように実家と電話連絡をしていて、それが途絶えたことで家族が心配し捜索願を出していた。

 この事件の被害者は、他人と一緒の学生会館暮らしを嫌い、一人暮らしを望む若い女性という、近年流行のパターンである。新聞報道によると、「翌年には一人でマンションを借りる計画」であったという。けれどまだ上京して一年も経過しておらず、何故栃木の両親が承諾したのか、そこが解せない点だ。この被害者のケースではないが、地方から上京して大学へ通う女子大生は、学生会館などを敬遠する傾向にあるという。

 親たちは心配して安全性の高い学生会館に入れたがるが、娘は自由を束縛されるからとそこから出たがる。アパートやマンション生活となれば、嫌いな人間と付き合う必要もないし、第一門限がないから伸び伸び暮らせる。そんなわけでルームメイトと一緒だったり、または一人での生活に憧れるのだ。彼女たちは一般的に不用心である。防犯についての関心も殆どと言ってよいほど持ち合わせていない。それはそうだ。生まれてから成長する過程において、勝手気儘で支障なく育ってきたのだから、自分には何も起こらないという考えになる。その延長線上の感覚で海外へ出るから、台湾で殺されたり、韓国やネパールで行方不明となるケースさえ出てくる。被害者には気の毒だが、被害に遭う側にも問題ありだ

 ただし不動産会社の店長による女子短大生殺しは、犯人の悪質な計画性が目につく。板橋区内のマンションを見学させたあと、大田区内のマンションに案内している。知人の持っているマンションで、犯人が鍵を持っていたのだ。その一室に連れこみ乱暴しようとして、女子短大生に抵抗されたようだが、手口から考えて前にも同パターンで成功しているのだろう。たまたま被害者の場合、応じなかったので殺害された、と推理するのが順当だ。

こうしたケースで世間慣れしていたり気転の利く人なら、予定外の見学は断るに違いない。板橋区から大田区までだと、かなり時間を要するし断る理由にこと欠かないだろう。しかしこの事件の被害者は、ついて行ってしまった。それまで部屋探しに親切にしてくれていた犯人を、信用していたに相違ない。マンションなどは内部に入ると密室の状態になる。そこに男と二人だけで出かける危険性を考えるべきであった。こうしたケースでは友人に一緒に来てもらうなど、安全対策は幾らでもあったはずである。

一方、犯人に至っては、何を考えているのか全く判らない。恐らく被害者があまり警戒心がないので、これは大丈夫だとの確信があったのだろう。過去に成功したパターンと、全く同様なので実行に踏み切ろうとした。それしか推測できない。

 ところが抵抗された。気の小さい人間だとそこで我に返り謝罪したりして何とかとり繕う努力をする。会社に知られたらクビは確実だから、店長にまで昇進してきた苦労を考え、平謝りという場面を想像してしまう。犯人の場合は、だが違った。繕うことを相手を殺してなし遂げようとしたのである。いくら死体を隠しても状況証拠から、彼の絡んでいたことは確かだ。そのあたりに考えが及ばなかったと言えよう。過去の犯罪を振り返ってみると、こういった犯人が決して少なくない。前後の見境をなくすタイプなのだ。

今後に予想される類似した犯罪この事件の犯人のような立場は、条件が揃いすぎている。不動産会社の店長で毎日のように女性客が訪れ、自動車で連れ出し部屋を一対一で見学しても当然で、その上に自由になる一部屋を別に確保できていた。この業種に限らず接客業のなかには、似たパターンの犯罪を起こす者が出てくるだろう。しかし殺人まで犯すことは殆どないに違いない。女性の方で妥協するか、犯人が未遂で終わらせてしまうか、いずれかが一般的な結末となると思われる。地方から大都市にきた女子学生や若い女性は、危険が一杯と言える。部屋探しの段階で事件に遭うのは例外で、むしろ部屋を確保してからが問題だろう。

 前に大丈夫だったから、今度も何も起ころうはずはない。これは危険なところに出かける、男女を問わず若者に共通した言葉だ。ところが前回のとき平穏無事で終わったのは、むしろ偶然だったというケースがよくある。

 私はコロンビア取材から帰った直後、友人とカウンターだけのバーで飲みながら、メデジン・カルテル(コロンビアの薬密売組織)の話をしていた。すると関係ないTV関係者とか称する輩が、「自分もあそこへ行ったことがあるが、あんたの話はつくり話だ」といったようなことを、いきなり吼え始めた。そのグループのなかに私の愛読者がいて、私に味方してくれたため何もしなかったが、顎をたたき割って三カ月ほど流動物だけの食生活を送らせてやろうと思ったほどだ。その輩が訪れたのは数年前で、まだ麻薬戦争も取り沙汰されておらず、しかも首都の限られた範囲で平穏な数日を過ごしただけである。わずかの期間で政情が激変するのが、中南米の特徴であるのを考えない暴論だった。そうしたケースはパナマを見ればよく削る。1989年のノリエガ将軍失脚までは、パナマの治安はそれなりに安定していた。皮肉なことに失脚して民主的な政府が樹立されると、92年の時計会社駐在員の殺害事件のような凶悪事件が起こった。

 だから不慮の災難に遭遇しないための条件は、前に平気だったから今度も大丈夫、という考えを完全に捨てることだろう。それに何か起こり得ると頭の一隅で考えている人は、突発事態にも素早く対応できる。けれどタカをくくっている人は、奇襲を喰ったのと同じ状態に陥り、荘然自失の状態になったり、判断を誤って重大な結果を招くのだ。客商売の人たちのなかには、どういった前歴を持った人がいるか、表面上だけではとても判断がつかない。
  犯罪に対する刑が軽くなり、模範囚が早く出所できてしまう今日、婦女暴行の常習犯が女性相手の仕事に就かないとは、誰も言い切れないであろう。幼児趣味で殺人を犯した男が幼稚園の送迎バスの運転手だったという、そんな事件も発生しているほどだ。もちろん失敗に懲りて出所後は懸命に更生しようとする、そうした人も少なからずいることは確かだ。だが再犯者も実に多い。それも前回と同じパターンの犯罪を、飽くことなく繰り返して逮捕されてしまう。出所直後に関西方面で連続してスナックの女性経営者を殺した犯人は、以前もスナックの女性経営者を殺害して収監されていた。私は出所者を差別しろと主張しているのではない。だが、なかには愛想笑いという仮面をかぶった、いろいろな人間がいることに注意を促しているのである。とりわけ一般社会を知らない、地方から都会に出てきた若い女性は、他人の言葉を真偽半々で聴く心構えが必要だろう。他人を信じるという絵空事は、幼児の世界にも通用しなくなっているのだから。

平成9年(1997)9月現在、東京の世田谷区方面で連続して起こった、白いマンションを狙う婦女暴行殺人の犯人は、依然として逮捕されていない。千葉県千葉市では、一人暮らしのOL(23歳)が侵入した男に殺害された。この事件も交友関係が多く、なかなか犯人を絞り切れていない。また、深夜に帰宅しようとして、東京の大田区の自宅寸前で全裸死体で発見された女性もいる。この犯人についても、全く手掛かりが掴めていない。

一緒に東京・池袋のラブホテルヘ入った男から、暴行を加えられた上に絞殺された、24歳になったばかりの女性もあった。この場合、犯人は逮捕されている。

 このように戸締まりといった防犯の基本を怠ったり、深夜に出歩いていて殺されたというケースが少なくないのだ。

最初の混乱期を除く戦後五十年近く、日本は治安良好であることを世界に誇ってきた。そのため婦女子が深夜に出歩いても安全だという、神話ができ上がってしまった。けれどその神話は崩れつつある。外国人の不法就労者の増加に伴い、〈絶対安全〉という四文字が過去のものとなりつつあるのだ。少年犯罪も少年法という過保護の典型のような法律に譲られ、確実に凶悪化してきている。平成9年の神戸で起こった、酒鬼薔薇事件は少年法が過去のものであると警鐘を鳴らしているのだ。

 

身近な危機から身を守る本  著者=柘植久慶  PHP文庫 より 抜粋

 

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