tomatoyoko.gif (61032 バイト)    阪神間(西宮市−甲子園界隈)の賃貸住宅 と分譲マンションのトラブル回避のヒント集、 マンスリー マンションを掲載. リンクフリー

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RCの場合
 

 

1999年スウェーデンからの警告 

日本のマンションにひそむ 「 史上最大のミステーク 」
赤地 学 ・ 江本 央 ・ 金谷 年展 共著 TBSブリタニカ 1600円


 「まさか! 日本でこんなことが起きているなんて、信じられない」
 スウェーデンの名門校ルンド大学の会議室でのことである。日本のコンクリート建築物の説明を受けていた、ブー・アダムソン博士、インゲマー・サミユエルソン教授、アーネ・エルムロート博士といった世界の第一線で活躍している建築物理や室内環境の専門家たちの声である。
 コンクリート建築、とりわけマンションではやってはいけないという内断熱を、こともあろうに日本が堂々とやっていることに彼らは愕然としたのである。
 20年以上も前に、コンクリート建築物は
外断熱しかありえないというのが常識となっているスウェーデンに住む彼らには、驚きもひとしおなのだ。
 かつて公害問題に、そして現在は環境問題にも前向きに取り組んでいる日本。経済成長著しく、世界の中でも著しい発展を遂げたと思ってきた日本で、世界の常識である外断熱をなぜとってこなかったのか。
「日本では、コンクリート建築物の99%以上が無断熱と内断熱であるという事実をご存知でしたか?」と問いかけると、
 
「まったく知らなかった。信じられない。日本の行政は何を考えているのか」
と逆に、行政に問題があるとの指摘を受けた。
「スウエーデンでは内断熱マンションはないのですか。また、過去において結露被害、例えばこの写真のような被害は起きなかったのですか」と、念のためにもう一度写真を見せて尋ねる。
「20年以上も前は、部分的に内断熱を施したものもある。しかし、それ以降の新築においては、すべて外断熱となっている。このようにひどい被害はないが、これに近い
結露被害が50年ほど前にあった。でも、こんなにひどい状況になるのは、建築業者の手抜き工事が原因だ。それにしても、日本の建築業者もこのようなマンションを造って、よく平気でいますね。スウェーデンでは考えられない。
 
バルコニーが落ちたら誰が責任を取るのか
 彼らに、さらに、日本のマンションの外観の写真、構造断面のスケッチ、被害状況などを説明していくと、
「なぜ、このようなバルコニーを許しているのか? 日本の役人はおかしい!」
と一痛烈な批判をしたのが第一章でもふれたバルコニーの問題である。彼らからみると、日本のマンションのバルコニーの多さ、ましてマンションをぐるりと取り巻いているバルコニーは異様に映ったのだ。
 「日本のバルコニーの作り方はおかしい。こんな、先端に支柱がないバルコニーでは、根本上部にクラックができて水が浸入し、鉄筋を腐食させてしまうでしょう。このような建物は何年もつのか? もし20年、30年後にバルコニーが落ちたらどうするのか、その対策はあるのか?誰が責任をとるのか?」と次々と質問を浴びせられた。
 まさに、彼らの質問のとおり、日本のバルコニー問題は、今後日本の大きな社会問題となるだろう。「バルコニーはサービス面積」とPRし続ける販売業者、バルコニー問題の根本を理解していない行政、そして少しでも広くと、開放感を求めつづけてきたユーザー。
 大きな事故が起きていない現段階で、この三者の間では利害が一致しているかのようにみえる。
 ひとたびバルコニーが落下する事故が起きたらと、考えるだけで恐ろしい。バルコニーで洗濯物を干している最中に上の階のバルコニーが落ちてきたら、その人は圧死する。はたして、残された遺族は誰を責めることができるのだろう。誰が保障責任を負うのだろう。
 建築物理学のトップの学者らが警告するのは当然である。さらに、エルムロート教授は続けて言う。日本が今後も内断熱を続ける限り、いままで起きてきた結露被害が続くのは当然だが、さらに悲しいことには、コンクリート建築物の寿命が短いものが増え続け、人が長く住みつづけられないことである」コンクリート建築物の耐久性の面からも、内断熱にはメリットがないと指摘する。
彼らに日本の現状を伝えるため、「日本はマンションの歴史が浅く、まだ30数年ぐらいだが、もうすでに30年を経過したマンションが解体され始めている。しかも、かなり多くの解体事例がある」と投げかけると、
 「
たった30年しか持たないものを建築物とは言わない! (笑) スウェーデンでは車でも30年くらいは使う。
 地球環境問題を考えるうえからも許されることではない。それが現実なら、解体して建て替える時に、全部外断熱にすれば、長持ちするマンションに変わるではないか! 簡単な話だ」と、エルムロート教授は断言する。
 確かにそのとおりである。これから建て替えられるマンションをすべて外断熱にすれば、資産価値のある長寿命型マンションに変われるはずだ。

 しかし、建設業者たちが素直に外断熱にするだろうか。
「これまでは、一般の戸建て建築なら15〜20年、マンションなどは30年をめどとしたものしか造ってこなかった、という建設業者の本音を多く聞いている。あまり耐久性が高く、
長寿命の建築物を造ってしまうと、彼らの仕事がなくなる、というのが理由のようです。このような日本の建設業者の考えをどう思われますか」
 「だから、エコノミック。アニマル!と言われるのかもしれません」と、フー・アダムソン博士は笑う。

 環境省の下にある住宅行政
 「人間は快適に住む権利を持っているはずだ!」場所は変わり、スウェーデンの住宅行政をつかさどる住宅庁の中の一室である。住宅に関する法律、規則作りを担当するベント・リンドストーム建築サービス部門部長に、日本のマンション被害を説明したとき、発した言葉である。
 「快適に住む権利、これはスウェーデン憲法の基本的人権にうたわれているもので、当たり前のことだ。私たち行政マンは、この当たり前のことを基本に各種法律や規則、ガイドラインを作成するのが仕事。ただし、あまり細かすぎるものは作っていない。時代とともに変わるし、業者の解釈に任せている。それにしても、日本のこのような被害は残酷すぎる。昔の話でなく、いまの話なのか?」と、不審がる。

 

構造からの考察 
内断熱では昼夜、また季節によって、内側と外側の温度差が大きくなる。コンクリートは最大で70℃近くにも及ぶ温度差にさらされることになる。一方、
外断熱では昼夜も真冬でも温度差がほとんどない。
 したがって、内断熱マンションは温度差ひび割れの可能性を常にもつことになる。また、コンクリートの内側で断熱しているため、断熱材の外側にあるコンクリートは冬季と夏季の温度差を直接受ける。このため一年を通じてみるとコンクリートが絶えず膨張・収縮を繰り返すことになり、経年劣化は避けられない。内断熱の場合は、このクラックは必ず起こる。コンクリートに壁内結露水が浸入し、鉄筋の腐食をより促進させてしまうからだ。さらにもう一つの問題は、コンクリートが外壁と接しているため、雨水が浸入しやすいことである。この雨水が、コンクリートのクラックヘ浸入し、やはり鉄筋の腐食とコンクリートの劣化のスピードを速めている。
 特に昨今の酸性雨は、コンクリートの劣化や鉄筋の腐食をかなり促進させる。この点、通気層をきちんと施した外断熱では、内断熱で起きる問題をすべてクリアすることができるのだ。
 前出の田中教授は、
内断熱は30年、外断熱なら150年以上」と耐久性に五倍の差が出ると指摘している。建物の耐久性の面からだけでも、天と地ほどの違いがあるのだ。まさに、内断熱が欠陥建築物たるゆえんである。

 本書の共著者である江本史氏は内断熱、外断熱を次のようなたとえ話で語ってくれた。
 「世界の非常識である、日本の内断熱マンションは、いわゆる酔っぱらい工法といえる。酒を飲んで酔い、内側から身体が温まったと思っていても、酔い(暖房)が醒める(止まる)とすぐに寒さが身にしみる。おまけに悪酔や宿酔(風邪やカビ)になり、薬を飲む(改修工事)はめになる。
 一方、ヨーロッパではもはや常識である外断熱マンションは、いわば防寒コート工法だ。寒い日に十分な厚さの高性能な防寒コート(外断熱)を着ていれば、風邪や病気にかからない。高性能の防寒コートは、身体(建築物)をすっぽり包み込み(外断熱)、着ている人(建物)は暖かく、健康でしかも長生きできる」

 近年100年マンションという言葉をよく耳にする。これはコンクリートにおける鉄筋のかぶり厚さ(鉄筋表面とこれを覆うコンクリート表面までの最短距離をいう)を厚くしたり、鉄筋の密度を上げてコンクリート構造の耐久性を上げることで100年もたせようとするものである。
 しかしこれにも大きな落とし穴がある。
かぶり厚さをいくら厚くしても、内断熱を施してしまえば、コンクリートは外気の温度差を直接受けることになる。また内部の温度差も避けられないため、結局クラックが発生してしまい、コンクリートを厚くした意味がなくなってしまうのだ。すなわち、内断熱のままかぶり厚さを厚くしても、耐久性の向上にはつながらない。これも、すべて外断熱が前提でなくてはならない。
 さらにもう一つ、ハードとしての耐久性ではなく、居住耐久性の問題も重要だ。たとえハードとしての構造体がまだ耐えられるからといっても、カビやダニだらけの室内環境ではとても住むことはできないだろう。内断熱マンションでは、構造体自体の耐久性があっても、入居者がいなくなり、スラム化してしまうのは時間の問題なのだ。

 

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